<注意>コチラは、<ハードワーク>の小説冒頭部分です。 その一 エド、謎の手帳を拾う ある日の午後の事、中央司令部の廊下を歩いていたエドワード・エルリックは、 黒い皮製の手帳を拾った。 良くある手の平サイズのスケジュール帳であり、表紙だけを見たのでは、誰のものか まるで検討がつかない。仕方なく、中をパラパラとめくって目を通してみると、 このような内容が記載されていた。 『 夕刻になり、私は、キャサリンといつものバーで待ち合わせをしていた。 彼女は、黒いシルクのドレスを着ており、大きく開いた胸元には、深紅の サファイアを散りばめたブローチが揺れている。 私が、仕事のために、少し時間に遅れて席に到着すると、彼女は待ちわびていた 様子で、嬉しげに微笑みかけてきた。…… 』 「うわっ! もしかしてコレは?! マスタング大佐の手帳か? 」 ロイ・マスタング大佐の手帳には、女性の名前で錬金術のレシピが記載してあると、 司令部ではかなり前から噂になっていた。錬金術師が、他人にわからないように 暗号化した手帳を持っている事は、一般的な常識となっていた。 エドワードは、「へえ、これが有名な大佐の手帳かぁ。」と呟くと、ニヤリと楽しげに笑った。 他に、どんな内容が書いてあるのか、とても興味をもってしまったのだ。 さらに、二〜三ページ先の内容を読んでみる。 『 ……彼女は、酔っているらしく、私の首へと強引に腕を回すと、激しく口づけをしてきた。 それから、まだ、バーの廊下に立ったままの私へ、悩ましい視線を向けると、膝で私の 足を割ってきた。 「君は、とても大胆なんだな。まだ、会って十五分しか経っていないのに。 いつも、こうやって男を誘うのかい? 」 私の問いに、彼女は、美しい黒い瞳をうるませて、こう言った。 「ふふ。私には、時間が無いんですもの。強引にもなりますわ。……知ってらっしゃるくせに。」 確かに、彼女には時間が無いだろう。 一緒にバーへやってきた夫は、酔いつぶれているとは言え、自分の妻が他の男とこのような 行為をしていると知ったら、激怒する事はうけ合いだった。 「貴方も、同じでしょう? お連れの女性が心配していますわよ。」 確かに、私も、席には恋人のキャサリンを待たせたままだった。 』 「……って、他の女を口説いているのかよ?! 」 思わず、そう大声で叫んでしまい、エドワードは慌てて自分の口を手で塞ぎ、周りに人が
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